日本のリン鉱石の輸入先について

店頭から国産野菜が消える? 米・中が肥料の輸出を実質禁止」の記事にちょっと引っかかる。

いや定性的には妥当な話だろうとは思う。「店頭から国産野菜が消える?」てのは煽りすぎじゃねえかと思うが。たださあ……

日本はリン鉱石の全量を輸入に頼っており、その多くを中国に依存。もともと、危うい立場にあった。

こういう表現がね。「多くを中国に依存」って、どのくらい? 「ほとんどを」といった表現ではないから中国からの輸入が80%以上といったことはなさそうだが、やはり日本のリン鉱石輸入量における中国の具体的なシェアを知りたくなる。

まあ、知ってどうなるという話ではないかもしれないが、俺はちょっとモヒカン入ってるんでねえ。

ということでデータを探してみる。
まずどこを見に行くか。ちょっとググった程度ではずばりという資料は見つからない。どうも、googleの検索結果を何ページも見ていくよりは真面目に政府統計を探した方が早いような気がする。

そこで肥料なんだから農林水産省に……というのが畜生のあさましさ。輸出入の統計は財務省の管轄なのである。まあ農水省も資料を作っていないわけではないと思うが、サイトでは見つからないのである(そう、最初は農水のサイトで探してしまったのだ)。ま、農水省の資料があったにせよ大元は財務省というか税関が作っている資料だろうから財務省のサイトで探すのが吉だろう。

ということで「財務省貿易統計」の「普通貿易統計」のページから辿れる「概況品別国別表」を見る*1

「普通貿易統計」ページの注釈に

  1. PDF形式の統計表の累計欄は1月からの累計なので、年分のデータは12月の表の累計欄を見る
  2. CSV形式の統計表の金額は1000円単位。国名は番号での表示のみ。
  3. 概況品名は、番号のみでの表示です。
  4. 概況品コードの最初の1桁により、年月選択の後に表示される「閲覧希望の番号を選択してください」で選択すべき見出しが分かるようになっている。

といったことが書いてあるのに留意。

国名まで番号だと面倒なのでPDFを開くことにして、「概況品による検索表(概況品情報)」ページで概況品コード表(PDF)をチェックする。なお、財務省貿易統計では「リン鉱石」ではなく「りん鉱石」と表記してあるので、「リン鉱石」で検索するとヒットしないという罠がある。ま、とにかく、表を見ていけば

  • 概況品コード 21301 りん鉱石(統計品目コード(HSコード)2510)

ということが分かる。最初の1桁が2なので、年月選択の後は「食料に適さない原材料」を選択すればよい*2

これでようやく「概況品別国別表」の各年の12月の表を開いて統計数字をチェックできるわけである。2001〜2007年までを見られるが、それ以前のデータはどうも財務省のサイトにはないようだ。冊子体の統計表を探せばよいと思うが、そこまでは勘弁。

ただし、リン鉱石の管理状況及び一般消費財としての肥料に関する意見というPDFに1998〜2002年までのグラフが掲載されている(出典は「財務省貿易統計」になっている)。これに数値も掲載されている。百位で四捨五入をしているようだが、参考までにここから1998〜2000年までの数値も抽出しておく。

さて、肝心のデータは下記のようになっていた。表の形で示す。

リン鉱石の国別年次別輸入量(単位 t)

中国 ベトナム イスラエル ヨルダン 米国 ロッコ 南ア その他 合計
2001 372,253 no data 10,000 106,050 no data 81,500 200,820 22 770,645
2002 365,348 no data 37,000 95,200 21,854 102,877 222,248 no data 844,527
2003 386,902 no data 17,000 79,900 22,459 108,500 199,703 no data 814,464
2004 399,420 no data 16,150 113,793 11,563 104,214 174,731 701 820,572
2005 387,333 no data 11,700 149,420 no data 111,930 111,274 2,640 774,297
2006 260,812 60 16,940 165,350 no data 184,817 148,923 6,620 783,522
2007 275,389 22,942 13,904 151,450 no data 131,827 123,953 2,640 722,105

注 1) 「その他」は韓国、インドネシア、ロシア、ブラジル。原資料には国別の値が記載されていたが、少量であるためisikaribetu07が合算した。 2) “no data”は統計表に記載がなかったことを示す(輸入量が(四捨五入して?)1tに満たない場合は0と記載されると推測される)。
出典: 財務省貿易統計(2001〜2007)
(なお、表の正確性については一切保証しない。だいぶ混乱しつつデータをまとめていたので思わぬ誤りがあるかもしれない。どなたか詳しい方がチェックするなり作り直すなりしてくださればよいのだが)

参考: 1998〜2000年のリン鉱石の国別年次別輸入量(単位 t)

中国 ヨルダン ロッコ 南ア その他 合計
1998 293,000 162,000 231,000 234,000 23,000 943,000
1999 343,000 120,000 210,000 223,000 36,000 932,000
2000 343,000 128,000 140,000 258,000 29,000 898,000

注 1) 「その他」の内訳は不明。 2) 輸入量は百位で四捨五入した値と思われる。
出典: 日本肥料アンモニア協会 (2003) リン鉱石の管理状況及び一般消費財としての肥料に関する意見. 放射線審議会シンポジウム「自然放射性物質の規制免除について(案)」におけるpdf資料


……いや面倒くさかった。ちょっと疲れたので表の感想は後ほど(オイ)。

上は一応整理して書いてあるので順調に探し出せたように見えるかもしれないが、実際にはさんざん行きつ戻りつする羽目になった。

政府統計の開示の仕方って、もうちょっとなんとかならんのですか。

2008-06-16追記

その後、概況品別国別表のページで品名を指定して検索できることに気付いた。「概況品の指定」の横にある参照ボタンを押せばリストが表示されるので、コードを事前に調べなくても一応は大丈夫である。ただし、自分の調べたい物品が概況品名で何に当たるのかは事前に知っておかなければならない(ものによっては概況品名が容易には想像できない)。
概況品を指定したら、「統計年月の指定」の欄を検索したい年の12月とし、「国の指定」を「全対象指定」にすれば、それぞれの品目の取引国別の年間累計が見られる。また、こちらでは1989年以降の統計が見られるようになっている。

ということで、「もう少しなんとか」なってましたね。
すみませんでした>財務省

年別国別の表にするのが面倒なので、1989〜2007年の輸入総量だけ表にして掲載しておく。この20年でリン鉱石の輸入量は半分くらいになっているんだなあ。単純に耕地面積の減少などにより肥料の需要が減ったのか、鉱石でなく肥料製品としての輸入がなされるようになったのか……まあ、これ以上の追求はきりがないので止めておくが。

リン鉱石輸入量の年次推移

年次 輸入量 t
1989 1,590,053
1990 1,543,302
1991 1,455,907
1992 1,453,204
1993 1,395,178
1994 1,194,059
1995 1,332,573
1996 1,178,028
1997 1,030,763
1998 976,109
1999 932,946
2000 899,190
2001 770,645
2002 844,527
2003 814,464
2004 820,572
2005 774,297
2006 783,522
2007 722,105

出典: 財務省貿易統計(1989〜2007)

*1:実際は「品別国別表」でも調べられるが、「粉砕したもの」「粉砕していないもの」が区別されているので、ちょっと面倒なのだ。

*2:ここで「食料でない原材料」とか「食料以外の原材料」と表現しないのが役所っぽくてステキだ。なんか理由があるのかもしれないが私には分からない。