青年誌上の作品に登場したゲイたち

id:nodadaさんのこのエントリに関連して思い出したことを書きます。またしても一部に対する反応なんで、ちょっとアレですが。

男性読者も読む雑誌でゲイの出てくる漫画が掲載できたというのは、今まででは難しかったように感じる・・・ような、気もする、ような・・・・しないような・・・*1。それとも、私が知らないだけで、この他にもゲイの出てくる漫画はあったのでしょうか。

よしながふみの新刊でゲイのキャラクターが出てきた

はい、これまでにもゲイが登場する青年誌作品はありました。私が記憶している限りの例を下記に挙げて見ます。もちろん当然ながら、青年誌や少年誌にゲイが登場した全ての例を私が知っているわけではありません。チョイ役でゲイが出ている例まで考えると、とても把握しきれませんし、そもそも全ての漫画を読んでいるわけでもありませんので。

ということで、「これが入ってないのはなんでだー」といった感想をお持ちの方もいらっしゃるかも知れませんが、以下はあくまでメモということでご了承ください。内容の紹介についても、基本的に記憶に頼ってのものなので、いろいろ変な部分はあろうかと思います。その点もご寛恕を願います。

手塚治虫「MW」

青年誌・少年誌上の作品で、主要登場人物にゲイが出てくるものとして、私が知る最も古い例は手塚治虫の「MW」(「ムウ」と読みます。小学館ビッグコミック」に連載)です。ネットで検索すると、連載期間は1976-09-10〜1978-01-25となっています。

この作品では、主人公の結城美知夫と賀来神父が男性同性愛の関係にあります。同性愛を肯定的に扱っているわけではありませんが、私はそれほど否定的には感じませんでした*1。ただし、主人公の一人である結城は人類絶滅を画策するテロリストであり、同性愛も結城の異常性や特殊性の一つとして表現されているような感がありました。

石坂啓「夢みるトマト」

次に記憶にあるのは、石坂啓「夢みるトマト」(小学館ビッグコミックスピリッツ」に連載)です。掲載期間はよく分かりませんが、ネットで検索した限りでは、コミックス1巻の発売が1988年4月、最終巻である6巻の発売が1989年6月だったようです。

主人公は3名、女性の「とまと」と男性の「玉吾」「菜ちゃん」ですが、菜ちゃんが実はゲイで、ノンケの玉吾をずっと愛していたということが作品の途中で明らかになります。この作品は男性同性愛を比較的肯定的に扱っていると言ってもよいでしょう。少なくとも、同性愛は間違っている、といったメッセージは出していなかったと思います。といっても、実は、作品そのものに大して興味を持てなかったので、内容はよく憶えていません。たしか菜ちゃんは玉吾に思いを告げて一度だけ褥を共にするのですが、その後菜ちゃんは姿を消してしまいます。

里見満「RainbowLife」

さて、以上の2作には確かにゲイが出てきますが、ゲイ漫画というわけではありません。ではゲイ漫画が男性向け漫画誌に載ったことはないのか、というと、そんなことはありません。里見満の「RainbowLife」(2001年、集英社「MANGAオールマン」に連載)という作品があります。これはかなり本格的なゲイ漫画で、ゲイライフや、ゲイリブ、エイズの問題など盛り沢山の内容だったと記憶しています。

ただ、これは里見氏自身がなにかのインタビューで語っていたと思うのですが、あまりにも内容を詰め込みすぎでした。おそらく里見氏は、青年誌でゲイ漫画を連載する機会などもう二度と無いかもしれないと考え、とにかくゲイに関連することで知って欲しいことを全部入れようとしたのでしょう。しかしその結果、非常に混乱した読後感を与える作品になっていると思います。

真鍋昌平闇金ウシジマくん

最近では、真鍋昌平闇金ウシジマくん」(小学館ビッグコミックスピリッツ」に連載)の1エピソード(「ゲイくん」編)にゲイの男達が登場しています*2

登場するゲイたちは比較的リアルで*3、ある意味では、これまで見た漫画の中で最もニュートラルにゲイを描いた作品のような気がします。まあ、そこに描かれたゲイたちは決して褒められた人物とは言えないのですが、その「ダメさ」はゲイであることそのものとはあまり関係がない、と私は読みました。

その他

あと、これは掲載誌も掲載時期も作者も作品名も分からない*4のですが、昔(1980年代末?)、比較的マイナーな少年〜青年誌*5に掲載された、たしか新人のデビュー作で、ゲイであることを自覚していく少年を描いた短編があったはずです。その作家は、その後たしか1作だけ同じ雑誌に作品が掲載された後、見かけなくなってしまったので、漫画家は廃業してしまったのかな、と思います。もちろん当該作品はコミックスにもなっていないはずなので、今となっては読むのは非常に難しいと思います。

自分がとりあえず思い出せるのはこのくらいです。「ウシジマくん」以外は確実によしながふみきのう何食べた?」より古い作品ですね(面倒くさいので「ウシジマくん」の該当エピソードの掲載時期は調べてません)。

*1:賀来神父は二人の関係に苦悩しているが、まあキリスト教の神父だからな。

*2:Wikipediaによれば、そのうち1名は他のエピソードにも登場しているようだ。

*3:もちろん、この作品で描かれているのが全てのゲイに当てはまる類型だというわけではない。当然のことではあるが、念のため注記しておく。

*4:ひどいな、我ながら(笑)。

*5:白泉社の「少年ジェッツ」「月刊コミコミ」「月刊アニマルハウス」のいずれかだったように思うが全く確信が持てないorz